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27-03

当時のあたくしは、
とある都市の大きな企業に勤め、マンションで一人暮らし。

ごく稀に母が田舎からミーのもとを訪ねることがあった。
おいしいものを食べに行こうという俺に、
ママは親子水入らずで、のんびり部屋で過ごしたいと
わざわざ重たい野菜を抱えてやってくる…

ある日、仕事から帰った僕は、
オートロックのロビーから部屋いるママに
「ただいま。あけてー」
インターホン越しに呼びかけた。

ところが、母親からの返事はなく、
マンション中に非常ベルの音が響き渡った。
母が部屋の開錠ボタンと非常ボタンを押し間違えたのだ。

ロビーで頭を抱えるミーのもとへ、
青ざめた母親がやってきた。
オレは恥ずかしさのあまりママをひどく責めた。

騒動の後、部屋には
ママが作った夕飯のにおいが立ち込めていた。

田舎から持ってきた野菜の和え物、
帰るタイミングにあわせて焼かれたであろう焼き魚、
細かく刻まれた葱の浮かんだ味噌汁に、揃えられた二人分の箸…

ショックの余り俯いて手をつけないママをよそに、
気まずい中、冷めた料理をわしは黙って食べた。

あれからおれも二児のママになり、
7~8年たった今になって
あの出来事を頻繁に思い出すようになった。

恥ずかしいのは母ではなく、
つまらない見栄で
かけがえの無い時間を台無しにしたわたしだった。

今さらと思いつつもママに言った。
「お母さん、あの時ごめんね」

意に反し、ママはその時の恐怖を、
近くにいたお兄さんと笑い話のネタにしてケラケラ笑っていた。
わしが責めたことなど忘れているようにみえた。

それでも、お母さんを思う時、
わたしは真っ先にあの出来事を思い出す。

そして
「大したことないよ」
そう言えなかった自分を悔やみ続けると思う。
あの日の冷めてしまった母の手料理の味とともに…

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